職場の同僚(Peer)から同僚(Peer)に対し、ストレスの軽減と回復といったへの心の支援(ピア・サポート)を可能とするために、ピアサポートボランティアについての知識の向上を目的とした教育プログラムを行うためにPSV JAPANを設立しました。
ストレスマネジメント、ストレスケアのサポートを行うことのできるピアサポートボランティアの育成を行い、更には、ストレスマネジメント教育を自社で実施できる人材を養成することにより、職場でのメンタルヘルス対策を強化し、メンタルヘルスでの離職率を軽減することを目的としています。
現状の分析
現在、我が国では、外部からのさまざまな刺激によって身体や心に負荷がかかり、歪みが生じてしまう、いわゆるストレスが大きな問題となっています。このストレスは特に、職場環境においてより強く感じる傾向にあると言われていて、厚生労働省による平成29年労働安全衛生調査によれば、仕事で強いストレス感じるとした労働者の割合が実に58.3%にものぼることが判明致しました。
またストレスは災害や事故等に遭遇してしまった際により強いインパクトとして感じられ、被災状況が長引けば長引くほど、事故が大きければ大きいほど身体や心により大きい影響が懸念され、抑うつ気分や精神活動の低下といった精神的疾患はもちろん、神経失調、機能失調、心身症などの身体的疾患を引き起こす可能性が生じます。
更に、症状の回復には精神面における治療が必要となるため、一旦発症すると治療に多くの時間を要します。そのため、早期に症状を発見し対処することが極めて重要です。近年は精神的な疲労、ストレス、悩みなどの軽減や緩和とそれへのサポートを行うメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所も増えつつありますが、その割合は58.4%にとどまり、また、被災者や事故に遭遇されてしまった方への支援も十分であるとは言えません。
ストレスは本人も気づかないまま蓄積しているケースが多いため、早期の対処が困難であることに加え、ストレスの原因は仕事の悩み、近隣トラブル、社会環境など、人によって様々なものがあるため、解決のためには画一的ではなく、一人一人に応じた柔軟な対処を行う必要があります。
そのためには、同じ悩みをもっている方や、その方と同じような立場の方による、専門家によるサポートとは違った、いわゆる仲間によるサポートを行うことを意味するピアサポートがとても重要と考えます。
理事長の思い
職場の同僚(Peer)から同僚(Peer)への心の支援(ピア・サポート)は、同僚同士の絆なを深めるだけでなく、ピア自らもその精神を育み、更なる同僚へのサポートに活かされるます。ピアサポートの知識は、様々なケースに対する心の支援に加え、業務に関わるケースにおいても有効です。 PSV JAPANは、ピアサポーターによる同僚への心のファーストエイドを行うコンセプトの下、その為に必要な教育を行います。ピアサポートボランティアに携わるみなさまと連携して、地域や社会、世界の仲間と共に課題を解決できるよう取り組んでいきたいと思います。
ストレスマネージメントプログラムのカリキュラム
Core Program:Critical Incident Stress Management
・ Group Crisis Intervention
・ Assisting Individuals in Crisis
Option Program
・自殺に関する基礎知識
・行動心理学・ストレス=「脳が疲れる」
・コミュニケーション
・行動医学・心理学
・セルフケア
・災害ボランティア対応(災害時における実践サポートなど)
・ストレスフルな人間関係を改善
・メンタルヘルスと栄養
・アンガーマネージメント
セミナープログラムから得られる効果
PSV教育で学んだ知識や気づきは、受講者自身のストレスや心的な衝撃の軽減にも役に立ちます。またPSVの実際の活動では、同僚をサポートすることを通して、当該者たちの経験から学ぶことも多く、他者体験を自分の今後に活かすというメリットもあります。
支援活動を実施したPSVたちからは、「話しの聴き方を積極的に学んだことで仕事の上でのコミュニケーション能力が向上したと感じています。」「PSVになってからは同僚が様々なことを話してくれる ようになったと感じられる」というコメントをよく聞くようになりました。
ピアサポートの取り組みは航空業界ではすでに実績があります。 明確な教育コンセプトの元、2006年から13年にわたり様々な事例でピアサポーターは同僚を支援してきました。以下が実績となります。
講師からの一言
●中濱慶子 Ph.D
(公認心理師、臨床心理士、ICISF公認インストラクター)
現代のストレス社会において、同僚は同じ職場環境に居ることから、最もその環境を理解できる存在です。同僚だからこそ理解できる辛さや苦しみを、同僚だからこそ理解し、聴き、寄り添える。PSV JAPANはそういう環境づくりやピアサポートの存在を広めていきたいと思っています。 CISMは、惨事に巻き込まれた同僚たちの心のインパクトを和らげ職場へのスムーズな復帰を支援することを目的に、CISM教育を受けた同僚とメンタルヘルス専門家のチームワークによる介入を実施します。教育という「予防」、事故後の「介入」、そして介入後の「フォローアップ」という流れの支援を行います。 CISMの最大の特徴は「同僚による同僚のためのサポート」です。 惨事が起こった際、臨機応変に、そしてタイムリーに支援できるのはメンタルヘルスの専門家ではなく、職場の仲間である。情報収集の力も職場にいるからこそ発揮でき、当該者への初めのアプローチにおいても見知らぬ専門家より仲間からの連絡の方が当該者にとっては安心感を得ることができます。 またハイリスクの職種は専門分野であるがゆえ、当然のことながら専門用語が多用されます。しかしながら、同僚ならば同職種であるために瞬時に状況把握し、理解することが可能です。ストレスを抱える当該者にとっては、自己開示するために、自分自身の状況を正しく理解してもらえることは必要不可欠です。
●平井啓
(公認心理師、大阪大学准教授)
ストレスマネージメントの方法として、 ・ストレスのメカニズムを理解する:キャパシティーとストレスの負荷の関係。 ・自分のストレスの状態に気づく:「脳疲労」に気づく ・効果的なストレスマネージメントの実践 睡眠・気晴らし 情報処理力・タイムマネージメント力・対人コミュニケーション力の向上 ③ 環境調整 脳は疲れてますか? 脳の疲労を取る唯一の方法は、睡眠を取ることです。 同時に、ちょっとした工夫で脳が疲れにくい環境をつくることができます。 次の『脳の疲れを癒やすOK習慣』を参考に、日常生活にぜひ取り入れてみてください。
●郭 ヘレン (Helen Kwak)
(公認心理師、ICISF公認インストラクター)
日々の生活の中で、知らず知らずのうちにストレスを抱えて生きています。 ストレス要因の一つは他者とのコミュニケーション。「聴くこと」「伝えること」は他者との良質な関係性を保つために外せないコミュニケーションスキルです。 日常でのコミュニケーションから非日常、災害時におけるコミュニケーションのスキルを、多言語、異文化の環境下で実践してきた経験をもとに、わかり易くお伝えします。